梅雨や気圧の変化が歯の痛みを引き起こすってホント?

梅雨と歯痛

6月も間近になると雨の季節がやってきます。実は、雨と歯の痛みには関係があるのをご存じでしょうか。今日は、梅雨の時期や気圧の変化が及ぼすお口の中への影響を考えてみたいと思います。

1. 痛みと天気には関係があるの?

私たちの体の中はいろいろな臓器や管などの組織があり、それぞれが役目を果たすことで健康な体を維持できています。それに加え寒さや暑さなどの気温や湿度、気圧に至るまで、外の環境は目まぐるしく変化しています。暑ければ汗をかき、寒ければ体の中心に熱を集めるなど、自律神経の働きによってある程度は体の健康が維持されています。

しかし、天候や気圧の急激な変化によって、体調を崩す人がいるのも事実です。では、天気の何が原因で、体の不調や歯の痛み、歯周病の悪化などが起こるのでしょうか。

2. お口の痛みを引き起こす3つの要因

歯痛

天候や気圧の変化による痛みには、大きく分けて3種類の考えられる原因があります。それは、以下の3つです。

  1. 低気圧による組織の膨張による神経への圧迫
  2. 体力・免疫力の低下による炎症の悪化
  3. 交感神経の働き過ぎにより痛みが感じやすくなる

これらをお口の中の状態に置き換えて考えてみます。

1. 低気圧による神経への圧迫

実は雨の日は、「歯が痛い」と言って急患で来られる患者様が増えます。その大きな原因の1つは、低気圧です。低気圧とは、空気の圧力が低くなることです。低気圧になると空にたくさんの水蒸気が吸い込まれるため、雨が降りやすくなります。それでは、なぜ低気圧になると痛みが増えるのでしょうか。

体は、外からの気圧と体内からの外への押し返す力によってバランスを保っています。気圧が変化すると、体へかかる空気の圧力も変わるので、それに対応しなければいけません。体はどのように対応しているのでしょうか。

高気圧は、空気の圧力が高いので、外から体にかかる空気の重さも大きくなります。反対に、低気圧は、空気の圧力が低く、外から体にかかる空気は軽くなるのです。この言葉だけを聞くと、重たい圧力の高気圧のほうが、体の不調を引き起こしそうですが、反対です。低気圧になると体にかかる圧力が軽減されるため、体の内側から外へ押し出す力が大きくなります。登山や飛行機で高度の高いところに行くと、ポテトチップスの袋がパンパンになる原理と同じです。

体の中には、空洞や血管などの管が多くあります。お口回りでいうと、歯の中には神経などが通る歯髄腔(しずいくう)という空洞があります。そして、鼻の左右には上顎洞という空洞もあります。また、虫歯や歯周病が悪化している人の場合は、膿の入っている袋も存在します。低気圧になると、外から体を押す力が弱くなるため、体の中にある空洞や管が膨らみます。膨らんだ空洞や管などの組織が、周囲にある神経や血管が圧迫されることで、痛みを感じてしまうのです。

 低気圧や雨の日だけに痛むだけではなく、飛行機や登山などで高度が高いところにいっても同じ現象が起きます。例えば登山では、酸素が薄くなるなどのほかの要因も絡んできますが、山登りをしていて、突然歯が痛くなるというのもよく聞く話です。また、雨の日に歯だけではなく頭が痛くなるというのも、同じような原理です。

2. 体力・免疫力の低下による歯周病などの悪化

梅雨

体力が落ちていたり疲れがたまっていると病気になりやすい、というのは皆さまもご存じだと思います。外からやってくる悪い細菌やウイルスと日々戦ってくれている免疫細胞は、体の調子と比例して活発に活動します。そのため、体の疲れがたまると、免疫細胞が悪者と戦う力も弱くなってしまうのです。

 歯周病菌に焦点を当て考えてみます。元気な時は、お口の中も免疫力・抵抗力は高いのですが、体が疲れていると抵抗する力も弱まります。いつもは元気な免疫細胞のおかげで静かに黙っている歯周病菌も、体力が低下しているときに、ここぞとばかりに力を発揮し、暴れてしまうのです。気温や気圧の変化が重なり、体が体内環境の調節に励むようになると、それだけで体力は消耗してしまいます。体力とともに免疫力・抵抗力も落ちてしまうので、歯周病菌が活発に活動できるようになり、落ち着いていた症状が急に悪化するということが起きます。

天候と歯周病について研究した岡山大学の森田教授のコメントも引用します。

「調査の結果、春先に気温が急降下したときや、台風などの通過で気圧が変化したときなどに、歯周病が悪化する傾向がありました。今の時期で言えば、梅雨前線の通過後が要注意です。メカニズムはまだ不明ですが、気象変化によって生態の恒常性のバランスが崩れ、免疫力が低下することが要因と推測できます」

「歯周病の急性化が起こるのは、気象変化があってから1~3日後であることもわかりました。この時間差は、歯周病菌などの菌に対する免疫反応を引き起こすのに2~72時間とされおり、歯周病菌が歯周ポケットに侵入してから増殖して炎症を起こすまでの時間だと考えられます」(森田教授)

【引用】
ウェザーニュース→           https://weathernews.jp/s/topics/201906/100205/
岡山大学→ https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id346.html

気温・気圧の急激な変化が起こってから、1~3日以内に急に歯周病が悪化する傾向があると研究結果でわかったそうです。気になる方は、天気予報に合わせて歯医者さんの予約を入れると効果的に歯周病の予防ができるかもしれませんね。

3. 交感神経の働き過ぎによる過敏になる慢性痛

暑いときの発汗作用、寒いときに体の中心に熱を集め手足が冷たくなるなど、必要な体温調節をするのは、交感神経の働きによるものです。体に負担がないように体温や水分を調節する機能が活発になると、交感神経が緊張・興奮し、血圧の上昇、心拍数や呼吸数の増加につながります。

交感神経が活発に動くということは、体や脳が運動状態にあることを意味します。そうして、急に血圧が高くなることで、血の流れが悪くなり、体が危険を察知して痛みを感じる機能が敏感になるそうです。そのため血圧が上昇することで、体の慢性痛が悪化したり、昔の傷が痛んだりするのです。

要するに、気温や気圧の変化に適応しようと自然と働いてくれる交感神経によって、体の痛みが感じやすい状態になります。お口の中では、虫歯の治療後や傷などがそうした痛みを感じさせることがあるようです。普段は痛くなかったのに、突然治療したはずの虫歯が痛むというのは、気温や気圧の急激な変化によって、体温調節を頑張った結果なのものかもしれません。 スポーツする前の準備運動もけがをしないために大切ですが、急激な温度や湿度、気圧の変化に対応できるように、体も徐々に暑さや湿度に慣れるようにしていけたらよいですね。

3. 影響を受けない歯がある

晴天

天候の変化が原因で、歯が痛くなってしまう箇所は、虫歯があったり、歯周病が悪化したりした箇所です。治療が必要のない健康な歯が、気温や気圧の急激な変化によって痛みを引き起こすことは、ほとんどありません。逆の視点で考えると、痛みを感じるということは、体が「直したほうが良い箇所があるよ」と危険信号を送っている証拠。天候が安定して、痛みも治まったと言って、そのまま放置せずに、ぜひお近くの歯科医院へご相談ください。

これからは、雨の時期が始まります。低気圧の日が続くこともあり、歯や他の慢性痛が悪化することもあるかもしれません。天候の変化は、受け入れるしかないですが、普段から規則的な食生活や適度な運動を心掛け、急激な外の環境の変化に対応できる免疫力を作るのが一番の予防法です。体もお口も日々のメンテナンスが一番大事。梅雨の時期でもいつでも笑顔が輝いていられるように、お口の健康も大切にしてくださいね。

そして、痛みがあるときは我慢せず、お近くの歯科医院へご相談ください。プラザ若葉歯科でも、痛みがある患者さんは、我慢せずにご連絡いただければと思います。気になったときは、いつでも相談くださいね。お待ちしております。