舌の痛みや違和感の正体は舌痛症かも?

舌を噛んだり、火傷したりした覚えがないのに、舌に違和感や痛みを持った経験はありませんか?原因がわからないのに、痛みがあるととても不安ですよね。舌先や舌の縁がヒリヒリしたり、チクチクしたりするものには、舌痛症という名前がついています。この症状は、特に40歳以上の女性に多く見られます。
では、この舌痛症というものはどのようなものなのでしょうか。今回は、舌痛症についてお話しします。

1.舌痛症とは

結論から言うと、「舌痛症」とは痛みが唯一の症状である状態を指します。視診や検査などで調べても、他の異常が見つけられない場合に原因が不明な症状として行きつくものが「舌痛症」なのです。お口の中でピリピリやヒリヒリ、カーッとするような痛みや違和感がある病気を口腔内灼熱症候群(バーニングマウス)というのですが、舌痛症はその一つとして分類されています。舌痛症の痛みには、波があるようです。個人差もありますが、痛みがひどい方だと舌痛症のために何も手が付かなくなり、仕事や生活に支障が与えてしまうこともあるようです。

炎症や傷、腫瘍などができることによる舌の痛みは、検査や視診によって痛みの元を判断できるため、舌痛症と判断はされません。

2.舌痛症の症状

舌痛症の特徴と痛みの傾向には、次のようなものがあげられます。

(1)舌痛症の特徴

  • 舌や歯肉には炎症や潰瘍などの異常が見られない
  • 歯科診療後に発症することが多い

(2)舌痛症の患者さんに見られる痛みの傾向

  • 食事時に痛みが和らいでるように感じる(無意識にガムを噛んでいる)
  • 舌先(舌尖)、舌の縁(舌縁)に痛みが生じることが多い
  • 起きた時から就寝時まで舌の痛みが続く
  • ヒリヒリした痛み(焼けるような感覚)
  • チクチク・ズキズキした痛み(刺されるような感覚)

3.舌痛症にかかりやすい人の特徴

舌痛症を訴える患者さんには、閉経後の女性が多いことが特徴です。また、極度の不安体質であったり、不眠症、うつ病を併発していたりする場合も多いです。そのため、ホルモンバランスが崩れてしまうことが要因の一つと考えられることもあります。

  • 閉経後の女性(40~50代の女性)
  • 不安体質の方
  • 無力性や極度の不安、うつ症状などがある方

4.舌痛症の治療法

舌痛症はまだ原因が解明されていないため、効果的な治療法も確立していません。そのため、現段階では痛み止めの処方などで舌痛症の症状を和らげる、対症療法のみとなります。

患者さんによっては、特別な治療を行わなくとも症状が改善することもありますし、長期に痛みが続いてしまう場合もあります。症状に応じて、痛みをコントロールしたり、生活に支障がないようにしたりすることが治療の目標となります。

舌痛症を疑われる方は、まずはお口の専門家である歯科医院に相談することをお勧めします。お口の中の環境や歯の状態を確認し、噛み合わせなどの調整で治る場合もあるからです。その後で、患者さんの痛みの状態により、ホルモンバランスや神経性の治療などそれぞれのより高度な専門性のもつ先生を紹介してもらうことも可能です。

5.その他に舌が痛む原因

舌痛症は該当すると思われる舌の痛みの原因を調査した結果、当てはまるものがない時に最後に診断されるものです。先ほども触れたように、舌の痛みの要因には様々なものがあります。舌の痛みの原因となる代表的なものを、いくつかカテゴリーに分けてご紹介します。

(1)外的要因

舌の外側や環境が原因で、舌が炎症を起こしたり傷ついたりするものです。

ア.傷による痛み―物理的な要因によるもの

合わない入れ歯や、噛み合わせの不適合により舌を傷つけてしまうことが原因の痛みです。

食べ物と一緒に舌を噛んだら痛いように、入れ歯や噛みあわせなど舌の外側の状態が原因となり傷つけてしまうことがあります。破損してしまった歯の詰めものや、合わない入れ歯、正しくない噛みあわせなどが原因となり、舌がこすれて炎症になったり、潰瘍ができたりすることがあります。

イ.乾燥による痛み―環境的な要因によるもの

お口の中の乾燥がお口の中の傷を誘発することがあります。お口の中は、適度な湿度と唾液の分泌があることにより、様々な摩擦から守られています。特に女性に多くみられるのですが、加齢とともに唾液の分泌が少なくなり、お口の内側の粘膜や舌を守る機能が低下してしまうことが痛みとなります。

(2)内的要因

舌の痛みの内的要因には、傷の痛みではなく体内の疾患や栄養不足などが原因になっているものがあります。

ア.悪性腫瘍

舌のがんである舌癌(ぜつがん)の症状として、舌が痛みます。この病気の特徴は、舌の両脇に硬いしこりが見られることです。患部は白っぽくなりますが初期症状としては、痛みも出血もありません。がんが進行すると、痛みを感じるようになり出血も見られるようになります。痛みと共にしこりが認められる場合は、早めに口腔外科を受診してください。

イ.シェーグレン症候群

これは、涙や唾液を作り出している涙腺や唾液腺に炎症ができてしまう疾患です。唾液を出す機能が低下してしまうために、お口に極度の乾燥をもたらすことで舌に痛みを発生させてしまうことがあります。

ウ.悪性貧血

この疾患により、舌先のヒリヒリした痛みや赤みが発症することがあります。ビタミンB12の欠乏が原因の疾患で、舌先の炎症を引き起こします。この炎症のことをハンター舌炎と言い血液検査で確認します。見た目にも舌が赤くテカテカしているため、見分けられることが多いです。

エ.亜鉛の欠乏症

舌先での味は、舌の上にある味蕾(みらい)という器官で感じ取ります。味蕾は新陳代謝が活発なため短時間で生まれ変わるのですが、この働きを促すのが亜鉛です。亜鉛が欠乏すると味覚障害を起こしたり、舌の痛みを発症したりする可能性があります。

(3)全身疾患に伴うもの

舌やお口周りではなく、その他の体の病原菌が舌の痛みを発生させているものです。舌の痛みが全身や体の別の場所での不調である場合を指します。逆の言い方をすると、次にあげる病気や症状を患っている場合、2次性の痛みとして舌痛症を発症する可能性があるということです。

ア.糖尿病

糖尿病になるとお口の周りにある唾液腺の働きが抑制されてしまいます。喉が渇きやすくなったり、お口も乾燥したりする原因になってしまうのです。口の中が乾燥すると、舌が滑らかになりすぎたり、平らっぽくなったりするのです。それが舌の痛みを引き起こしたり、ピリピリ痺れたりするような感覚をもたらすことがあります。

イ.脳梗塞

体内でできた血の塊(血栓)が剥がれ、血管を移動して脳で血管を詰まらせてしまうことで起こる脳梗塞。前触れもなく突然起こってしまうものです。
舌以外の箇所のしびれや麻痺と同時に、突然症状が現れたのであれば、脳梗塞の疑いが高くなります。その場合は一刻も早い処置が必要なので、救急車を呼んでください。

(4)感染症-口腔カンジダ症

抵抗力が弱くなったり、疲れがたまってしまったりする場合に、カンジダ菌というお口の中にある常菌が悪さをして、痛みを与えることがあります。舌の上に苔のようなガーゼでぬぐうことができる白色の物質が現れるようになります。

(5)神経痛

舌の周りの神経をつかさどる神経には、三叉神経と舌咽神経と二つがあります。この神経が傷つけられたり、炎症を起こしたりしてしまうことにより、生じる舌の痛みもあります。

舌の痛みの原因にはさまざまなものがあります。舌にしびれや痛みを感じたら、まずはお口の専門家である歯科医院にご相談ください。特に口腔外科を併設している医院であれば、処置できる症状も多くなるため患者さんにとっては安心かと思います。

当院、プラザ若葉歯科は、舌痛症だけでなく舌の痛みに悩む患者さんの診察も行っております。舌に痛みがあるが原因がわからない、痛みが続いて気になってしまうなど、心当たりがある方は、遠慮なくご相談ください。

口腔外科

舌の痛み、お口の中の違和感、歯の心配事はもちろん、お口回りの診察も治療もぜひ、当プラザ若葉歯科にお任せ下さい。心がポカポカするような、温かいおもてなしで皆さまをお迎えします。