歯の生命線を知っていますか?

問題になるのは、象牙質にできたむし歯が歯髄の近くまで迫っているときです。感染した象牙質をできるだけ確実にとろうとすると歯髄を痛めてしまいます。
「神経をとりましょう」歯科医に言われるのはこんなときです。神経というのは歯髄のことです。
麻酔をして歯髄をとり、歯髄のあった空洞を埋めてしまう処置をすると、費用もあまりかかりませんし、治療にも時間がかかりません。
しかし、問題があります。
歯髄は歯の組織に栄養を送り、必要に応じて歯の内側から象牙質をつくる働きをしています。歯髄を取り除いてしまうと象牙質の細胞は死んでしまいます。歯はもろくなり、歯の寿命を縮めてしまうことになるのです。
歯髄を活かしたいのですが、それはたいへん難しいことです。そこで、こういう場合には、感染した象牙質をある程度まで削って、そこに薬を詰めておき、数か月待ちます。その間に象牙質が固くなり、歯髄の内側にも新しい象牙質ができます。それから、もう一度掘り返して処置をします。
このようにできるだけ歯髄を残す治療をしたほうが、長い目で見ると歯を守る治療になるのです。
時間がかからなくて、すぐに痛みがとれる治療が良い治療とは限らないのです。
歯髄をとるということは歯を死なせることです。