埋まっている親知らずは放置していいの?

15歳までに生えそろう永久歯は一般的に全部で28本あります。上下14本ずつで、上下左右に分けると7本×4か所(左上・左下・右上・右下)です。親知らずは、一番前の歯から数えて8番目にある奥の歯で、10代後半から20~30代の間に萌出します。英語ではwisdom teethと呼び、知恵の歯と呼ばれているようで、一説には親から自立して知恵を付け始めたころに生えてくる歯という意味があるそうです。

親が知らない間に生えてくるという芽は、あまり良いものでないことが多いです。親知らずも例外ではありません。半分埋まっていたり、全部埋まっていたりと完全に生え切れていない親知らずは、どうしたらよいのでしょうか。放置していてもよいものでしょうか?放置していいかわからないときは、ひとまず歯医者さんに相談するのが一番です。その前に、ちょっと知りたいという方のために、埋まっている親知らずについて、簡単にお話しします。

1.親知らずの生え方

人の顔・形などの容姿が一人ひとり違うように、親知らずの生え方も千差万別です。親知らずが生えない方もいますし、親知らずがあってもお口の中に出てきてない方もいます。親知らずの生え方には、どんなレパートリーがあるのか、簡単にご紹介します。

(1)上にまっすぐ生えている

隣の歯によりかかったり、もたれかかったりせずに、自立してまっすぐ生えてくる親知らずがあります。このような親知らずは、きちっと歯磨きやケアができていれば、問題がないため、「抜く必要のない親知らず」となります。

このような親知らずは、8番目に生えてくる歯の場所がしっかり確保できている時に、生えてくることができます。

(2) 斜めに 生えている

斜めに生える親知らずとして、イメージしやすいものが手前の臼歯によりかかるように斜めに生えてくる親知らずではないでしょうか。しかし斜めに生えるといっても、実際は角度の度合いも傾いている方向も人それぞれとなっています。

斜めに生えている歯の中で口を外から覗くと、歯の頭(歯冠)の一部が外側に出て見えることもあります。半分埋まっているという歯ということで、「半埋伏歯」といいます。

斜めに生えている場合でも、外側に歯の一部が出ていない場合があります。これを完全に埋まっている歯ということで、「完全埋伏歯」といいます。

(3) 真横 に生えている

真横になって完全に埋まっている歯のことを「水平埋伏歯」といいます。真横になって埋まっている親知らずは、知らず知らずに手前の歯の根っこを押していることが多く、そのため他の歯へ悪影響を及ぼすリスクも高いものとなっています

(4)(1)~(3)以外の生え方をしている

お口の中は平面ではありません。親知らずは、上・ななめ・横のどれかだけではなく、それが360度いろいろな方向へと生えてしまう可能性があります。数は少数ですが、頬っぺた方向に生えるもの、舌側へ生えるものや、通常歯が生えていく方向の真逆の方向へと歯が向かっていく場合もあります。

 歯のレントゲンを撮って初めて、骨の中に埋まっている自分の親知らずの方向を驚きとともに知る方もいるのです。

2.埋まっている親知らずの特徴と周囲の状況

(1)半分埋まっている親知らずの周囲

反対側の歯とかみ合う部分のうち、半分だけ表に出てきているなど、歯の一部が見えている親知らずは、とても歯磨きがしづらく汚れがたまりやすいです。特に、以下の部分で汚れがたまりやすく、それが原因で問題になるリスクが高くなります。

半分埋まっている歯の汚れがたまりやすい部分

  • かみ合う歯の面の上に歯肉が覆いかぶさっている部分
  • 隣の歯と接触している部分
  • 隣の歯と接触している箇所の陰に隠れる部分

特に、半分埋まっている歯は、斜めに生えていることが多く、手前の歯との陰になる見えない隙間ができてしまいます。陰になる部分は磨きにくいため、汚れが溜りやすい場所となります。親知らずは一番奥の歯であるため、歯ブラシも届きにくく、デンタルフロスなどを使うにもなかなか簡単にはいきません。

丁寧に磨いているつもりでも、手前の歯との間に生じた隙間に汚れがたまり、虫歯が悪化したり、歯周病で歯茎が腫れてしまうことがあるのです。半分埋まっているまま、放置してしまっている親知らずの歯の特徴をあげるとすれば、汚れがたまりやすいということ。そして、痛みや凍み・腫れのような自覚症状を通して、初めて悪化してしまった病状を知ることが多いということです。

(2) 完全に埋まっている親知らずの歯ぐきの 下

完全に埋まっている親知らずは、歯が埋まっているという自覚症状がほとんどないため、歯科検診やほかの治療によるレントゲンなどで気が付くことが多いことが特徴です。また、完全に埋まっている親知らずは、その親知らずの位置や伸びていく方向が、通常とは異なることが多いということも特徴となります。

何も問題がない場合は、抜歯をせずにそのままでいることもあるのですが、埋まっている状態のまま、ほかの歯を歯ぐきの中で押していたり、親知らずの周囲に袋状のできもの(嚢胞)ができる場合があります。

3.半埋伏・完全埋伏ともに放置することによる影響

(1)親知らずに隣接している手前の歯と共に虫歯や歯周病を進行させる

歯は密集して生えているので、完全に埋まっている場合を除いて、どの歯にも隣接する歯があります。歯と歯の間の隙間は、うがいや表面だけを磨く歯磨きでは汚れはなかなかとれません。親知らずとその手前の歯が隣接している部分は、お口の奥の部分。きれいにするには歯ブラシでもフロスでも難しい場所です。言い換えるとケアの難易度が高いため、親知らずと隣接する手前の歯の間には、汚れがたまりやすいということになります。

親知らずと隣接する手前の歯の間にある汚れは、掃除される頻度も低いため虫歯と歯周病にとって快適な住処となります。そのため、歯の間の汚れのもとが虫歯と歯周病を引き起こし、親知らずだけでなくその隣の歯も同様に症状を進行させてしまいます。また、この位置にある病気は、なかなか見えづらいため、ある程度病状が悪化し、痛みや疼きなどを感じるようになってから、発見されるということが少なくありません。

(2)骨吸収によって歯の根っこが溶ける

歯の根っこは、歯自体の急激な移動や、一定方向へ加えられる圧力によって浸食されるように溶かされることがあります。埋まっている親知らずでも、手前の歯の根っこを押しているようであれば、押されている歯の根っこは、だんだん溶けるようになくなってしまうという症状が確認されています。押している親知らずは健康でも、押されている歯の根っこが少しずつ浸食されてしまうため、気が付かないうちに手前の歯の支えがなくなり、グラグラして不安定になってしまうことがあります。

(3)親知らずの周囲に嚢胞ができる

外側に出てきていない、埋まっている親知らずの周囲に嚢胞ができる場合があります。嚢胞とは、体の中にできる袋状のできもののことです。基本的には、痛みなどの自覚がない場合が多いです。今後近くの歯や歯茎から細菌が感染して、痛みが伴うようになったり、腫れてしまう可能性があります。しかし、まれに悪性の腫瘍が疑われることもあるので、検査と処置をお勧めします。

4.抜いたほうが良い場合・抜かなくてもよい場合

抜歯をしたほうが良い親知らず、しなくてもよいものの、シンプルな判断基準をご紹介します。半埋伏歯は事前にリスクを回避するためにも、抜歯することをお勧めしています。完全に埋まっている親知らずには、①放置してもよいものと、②放置してはいけないものとがあります。

半分 埋まっている親知らず ⇒ 抜いたほうが良い
完全に埋まっている親知らず ⇒ 状況による

放置してもよいもの

  • 骨の中で他の歯を圧迫していないもの
  • 痛みや違和感がないもの

放置してはいけないもの

  • ほかの歯を圧迫しているもの
  • 痛みや疼き、違和感があるもの

いずれにしても、埋まっている歯がどのような状態にあるのか、検査することは必要となります。親知らずは、他の歯と同じように痛みも違和感もなく、噛みあう歯がある場合は放置しても問題ありません。しかし、半埋伏智歯と呼ばれる歯の一部だけ頭を出している親知らずは、問題を起こす可能性が高いので、早めにご相談することをお勧めします。完全に埋まっている親知らずは、急いでみてもらう必要はないですが、将来のために一度診てもらっておくと、安心できるのではないでしょうか。

いつでもお口や歯の心配事などがあれば、気軽に相談できるかかりつけの歯医者さんを見つけることが、将来の大きなリスクを回避する近道です。

プラザ若葉歯科では、お口と歯の健康から、地域の皆様の笑顔を守りたいと考えています。私たちは、皆さんの幸せな笑顔のお手伝いをする、プラザ若葉歯科です。いつでもご相談お待ちしております。