大好物は歯の天敵?歯を傷つける食べ物とは

皆さんが好きな食べ物は何ですか?好きな食べ物のナンバーワンはカレーライスだそうです。私も「カレーは苦手!」という人に会うたびに、驚いています(めったに会いませんが)。その他の好きな食べ物の上位には、お寿司や、らーめん、ハンバーグ、焼肉などがあげられるようです。食べごたえはあるけど、柔らかくて、濃い味付けが多いことが特徴です。実は、皆さんがおいしいと思って食べている食べ物の中には、歯にとって悪い影響を及ぼすものがあります。今日は、大切な歯の天敵となってしまう食べ物についてご紹介します。

むし歯になりやすい食べ物

歯のトラブルと聞いて、真っ先に思い浮かべるのが、むし歯。いつの間にか、歯がむし歯で黒くなっていて、痛くなってから気が付くという方も多いのではないでしょうか。むし歯はむし歯菌が作っています。そしてそのむし歯菌は、お口の中にある食べ残しや磨き残しの中にある糖が餌になるのです。むし歯菌がお口の中の餌である糖を摂取する時に、歯を溶かす酸を出します。

ポイントは、むし歯菌の餌になるものをお口に残さないようにすることです。お口の中に食べかすが残りやすいか、という基準で見ると、むし歯になりやすい食べ物がわかってきます。食べ物の中でお口に残りやすい食べ物を「停滞性食品」と呼ぶことがあります。

停滞性食品の特徴

  • ネバネバして、歯にくっつきやすい
  • 糖分が多く、むし歯菌の栄養になりやすい
  • 唾液の分泌を促さない

粘着性のあるものや、水分量が少ないもの、油っぽいものが停滞性食品と言えます。停滞性食品は、子供や大人に人気の物が多いため、量やバランスを考えて取ることをお勧めします。

むし歯になりやすい代表的な食べ物(停滞性食品)

  • キャラメル、アメなどのお菓子類
  • 菓子パン
  • ポテトチップス、スナック

唾液の分泌を抑制する食べ物

お口の中に潤いを与え、食べ物を上手に食べるために大切な唾液。唾液には、お口の中をむし歯菌や歯周病菌から守る働きがあります。唾液は、むし歯・歯周病菌などお口のトラブルから守るお口の中のスーパーヒーローです。歯周病になっている子供が少ないのは、活発な唾液の分泌の影響で歯周病菌が悪さできないためなのです。

食べ物をお口に入れると、唾液は自然に出てきます。基本的には、唾液の分泌を抑制するという食べ物はありません。しかし、飲み物の中には唾液の分泌を抑制するものがあるようです。ウーロン茶や緑茶、ワインなどに含まれるポリフェノールやカフェインには、摂取しすぎると唾液の分泌を抑制する作用があるものもあります。お口を潤すための水分補給が、唾液を抑え歯に悪影響を及ぼすこともあるかもしれません。

お口の中に入れて食べ物を咀嚼する時間があまりにも短ければ、唾液が十分に出ないままになってしまうこともあります。唾液の力を使って歯を守る、という意味ではよく噛むことが必要な食べ物が、歯に良い食べ物といえます。反対に、どんな食べ物でも噛まずに飲み物のように流し込んでしまうのは、歯にとっても体にとっても悪影響となりますので、ご注意ください。カレーは飲み物ではありません!!!

唾液の分泌を抑制するもの

  • ポリフェノール・カフェインが含まれている食べ物・飲み物
  • ゆっくり咬まずに、すぐ飲み込んでしまう習慣
  • 歌いすぎたり、話し続けること

唾液の分泌を抑制する飲み物

  • 緑茶
  • 抹茶
  • 日本茶
  • コーヒー

ゆっくり咬まずに、すぐ飲み込んでしまいがちな食べ物(柔らかい食べ物全般)

  • ハンバーグ
  • うどん
  • クッキー、スポンジケーキ
  • アボカド、豆腐
  • 煮込み野菜

唾液の分泌のことを考えると、パンはフランスパン。野菜は生野菜、おやつはかりんとうといったように、噛むほどに味わいが広がる食べ物がお勧めです。

pHが低い食べ物(酸性食品)

むし歯になるメカニズムとして、むし歯菌が酸を出すことが原因だとお話ししました。酸は、むし歯菌が出すだけではなく、食品の中にもあります。酸性が強い食べ物も、多く摂取しすぎると、直接歯を溶かす原因となってしまいます。

酸性・アルカリ性などの基準は、pHという単位です。この値が低いほど酸性が強いものとなります。食べ物で言えば、酸っぱいものが酸性の強い、pH値が低いものとなるのです。

お口は、唾液の働きにより歯を守るために、pHバランスが整えられています。食後は一気に酸性に傾くお口の中ですが、唾液の分泌と共にゆっくりと正常値(6.8前後)である弱酸性のpHに戻っていきます。

しかし、食べ物・飲み物の中には、とても酸っぱいものや、酸性の強いものがあります。想像するだけでも、唾液が出てしまう代表的な食べ物である梅干しやレモンは、酸性の強い食べ物です。短い時間であれば良いのですが、だらだらとお口の中に入れ続けたり、食べるのが止まらないと、歯にはかなりのダメージとなります。他にも、健康に良いからと原液でお酢を飲み続けたり、毎日柑橘類を大量に食べたりすることも要注意です。酸っぱいものではなくとも、スポーツドリンクもpH値が低く、酸性が高いものが多くあります。

歯の表面のエナメル質が溶け始める基準はph5.4。それを下回る飲み物は、長時間にわたって飲み続けるとむし歯の危険性を上げてしまうことになるので、ご注意を。

おなじみのドリンク別に見るpH値(参考値)
ミネラルウォーター pH7.0
牛乳 pH6.8
コーヒー pH6.2
紅茶 pH5.5
オレンジジュース pH4.0
スポーツドリンク pH3.5
炭酸系ジュース pH2.9
お酢 pH2.8
コーラ pH2.2
レモン pH2.3

固すぎる食べ物

歯は、人の体の中で一番固い部分だということをご存知ですか?自分の体重と同じくらいの力をかけて、食べ物をかみ砕いているのに、簡単に折れたり、欠けたりしないくらいの強度を持っています。

しかし、無敵ではありません。歯は一生もの、一度欠けたり折れたりすると、自然歯は戻ってきません。特に、虫歯治療で詰め物や差し歯をしている場合は、自然歯よりも脆いので、食べ物の硬さ

昔、私の父親が梅干しの種を噛み割って、なかから仁(じん)と言われる実を取り出していました。昔の人は歯が丈夫だったのでしょうか。固いおせんべいや、硬い飴、食べたくても、噛みたくても、歯をいたわってほどほどにしてくださいね。

内容よりもタイミング!?

歯に悪い食べ物や飲み物の特性をご紹介してきました。一言で言うと、人気の食べ物は歯に悪いということです!しかし、お菓子やジュースがないとパーティーは盛り上がりません。カレーという献立がないと、お母さんは夕食に困ってしまうし、スポーツドリンクがないとスポーツで汗をかくこともできません。

歯にとって大切なことは、お口の中のきれいさと、むし歯になりづらいpH値を維持することです。食べ物の種類や特性にこだわること以上に、食べるタイミングにメリハリをつけることの方が、歯とお口の健康を守る近道になります。食後は、お口の中が酸性に傾いています。酸性の強い飲み物を飲んだ後も同様です。この状態から、唾液がゆっくりと時間をかけて、正常値のpH値に近づけて中和してくれるのです。しかし、時間をかけて何時間もだらだらとお菓子を食べたり、飲んだりしていると、お口の中はずっと酸性に傾いたままです。しかも、食べ残しはずっとお口の中にとどまったままとなってしまいます。お口の中にいるばい菌にとっては、暴れたい放題の時間です。映画館で、炭酸を飲みながら、キャラメルポップコーンを2時間かけてゆっくり食べるだなんて、歯にとっては拷問のようなものなのです。

歯みがきの習慣もとても大切です。糖があるところでむし歯菌は働きます。歯みがきをしないと、お口の中は菌の餌だらけになってしまうのです。歯と歯の間や歯と歯ぐきの間も、磨き残しの多いところです。毎食後ではなくとも、1週間に1度でも歯間ブラシやフロスなどできれいにする習慣をつけましょう。

  • 食事中はしっかり噛んで、唾液の分泌を促進する
  • だらだらとおやつなどを食べ続けずに、食事の時間にメリハリをつける
  • 食後はきちんと歯を磨く

今、人気の食べ物には、カレーライスやハンバーグなど柔らかいものがとても多いですね。柔らかいものばかりを食べ続けると、あまり咬まずに飲み込めてしまうため、歯にとってもお口の中にとっても、唾液の活躍の場がありません。味わって食べるためには、どんなお食事も、ゆっくりしっかり噛んで食べることがポイントとなります。

歯は、皆さんの健康な毎日を支える、とても大切なものです。歯を守る知識と習慣を身につけて、一生自分の歯で食べる喜びをかみしめていただけたらと思います。食べることは、人生の中でも大きな喜びの一つです。

プラザ若葉歯科では、健康な歯を守る皆さんを応援しています。

また、むし歯、歯周病で今の歯の健康が心配な方は、遠慮なくご相談ください。

プラザ若葉歯科は、今日も元気に診療中です。