虫歯を放置したらどうなるの?

虫歯を放置するとどうなるかご存知ですか。全身に悪い菌が広がり、体のいろいろな部位に悪影響を与えることで、全身疾患につながるリスクが急増します。

筆者は、先天的に心臓の真ん中の壁に穴が開いているのですが、幼い時から親に「虫歯になったら死ぬからね!だから、きちんと歯を磨きなさい。」と口酸っぱく言われてきました。幼い時は、大げさなことを言って脅しているのだな。と思っていましたが、あながち嘘ではなかったと、歯の勉強をすることでより実感するようになりました。(少し気が付くのが遅めでしたが)
それでは、虫歯の進行と放置することのリスクについてご説明しましょう。

1.虫歯の初期段階

虫歯は治療しない限り治りません。食べかすや磨き残しを餌にして虫歯菌が酸を出し、その酸によって歯が溶かされていく病気です。虫歯菌が出す酸は、酸性雨と同じく酸性度合いの高いものです。酸性雨が銅像や石像を溶かしてしまうように、虫歯菌が生み出す酸は、体の中で一番固いと言われる歯も溶かしてしまうのです。
唾液は歯を酸から守ってくれるのですが、間食を取ったり、歯を磨かないでいたりするとお口の中は酸性に傾いた状態が続きます。そうすると唾液による歯を守る働きが発揮できないのです。

虫歯は、酸性に傾いたお口の中で発生していきます。最初は少し歯の表面が黒ずんでい程度で、痛みはほぼ感じないため、自覚症状もなく気が付かない人がほとんどです。

2.進行中の虫歯

初期虫歯を放置すると、歯の表面をどんどん浸食し痛みを伴うものになります。表面のエナメル質(C1)、その次の象牙質(C2)へと浸食は進んでいきます。象牙質の下には、人間にとっての警報アラームとなる神経があるので、浸食が神経に近づくほどに痛みとその感度は増していきます。最初は、冷たい物を食べるときに染みていたのが、暖かいものにも痛みを感じるようになり、歯を咬み合わせただけでも痛むようになっていきます。虫歯菌という細菌が歯の奥にある神経に炎症を生じさせる痛みです。このように虫歯が神経部位にまで進行している状態(C3)になると、激痛と言ってもよいほどの痛みを感じるようになります。

3.虫歯の末期

警報アラームである痛みは、虫歯によって神経が攻撃されることを示していますが、それでも何の処置も施さない場合、やがて激痛は収まります。歯の痛みに悶えていた人は、苦悶の日々から解放され、楽園に解き放たれたように思うかもしれません。でもそれは大きな勘違いです。虫歯菌という敵によって、体の異変を知らせる警報アラームが壊されてしまい、さらに体を守るための警備員が殺されてしまったことを意味します。体が敵陣に攻撃されていることを痛みで知らせてくれる重要な役割(神経)はもういません。今後、その歯の周囲にどんな異常があったとしても、気が付けなくなるのです。そして、死んでしまった歯の部分から、体への攻撃は受け放題となります。もちろんその時点での歯の保存はほぼ不可能です。

歯は歯の機能を失い、根っこだけしか残っていない状態です。歯の表面はほとんどなくなり、腐ってしまった神経だけが残ります。それでも、虫歯菌は働くことをやめないので、体内に膿を出し続けたり、歯の奥から体内へ続く毛細血管に細菌を乗せて、体中に炎症を引き起こす原因をまき散らすようになります。

4.虫歯から引き起こされる様々な疾患

虫歯が悪化すると、神経が死んでしまいます。そして、体を守ろうと戦った白血球たちが膿となってそこに残るのです。虫歯が引き起こす悪い影響は、炎症を引き起こす細菌が体中いたるところに飛んでいく可能性があるということです。しかも、その最近は身体に栄養と酸素を与えるために張り巡らされている血管に乗って全身に運ばれます。

歯の周囲で炎症が広がることで膿がたまったり、細菌が原因で血栓ができることで脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高まります。具体的に考えられる疾患の例を挙げます。

歯茎やお口の周辺に膿がたまる

口内だけでなく、怪我をしたときなどにも膿が出ることがありますね。傷口へ汚れが入ることで細菌感染が起こり、その結果炎症を起こして腫れあがってしまいます。体が細菌ととても大変な戦いを戦った結果として膿が出るのです。腫れるということは炎症を起こしているということ。そして炎症が体の免疫力を超えてしまった時に、戦って敗れた白血球たちが膿となって放出されます。そのため、膿が出てくることは重症になっており、治りも遅くなることを示しています。

歯の奥、顎の骨に膿がたまってしまうと歯茎が腫れてきます。そうすると、お口を思うように動かせなくなったり、食事をしづらくなったります。たまった膿が突然歯茎から出てきたり、出てこない場合は膿によってかかった内部からの圧力により激痛に襲われることもあります。

副鼻腔炎

かつては蓄膿症と呼ばれていた副鼻腔炎。鼻風邪が原因で起こることが多いですが、鼻の奥に続く空洞である副鼻腔(ふくびくう)に炎症が起こることを指します。上顎の奥歯は、副鼻腔に近いところに位置しているため、そこの虫歯を放置することで副鼻腔まで炎症が感染することがあります。特に鼻や口に近い内部に膿がたまると、嫌な臭いが常に付きまとうようになります。

頭痛

副鼻腔は顔の骨の中にあります。そのため副鼻腔炎が悪化し、膿がたまってくると顔や頭が圧迫されます。ひどい時には痛みもともないます。鼻の奥で膿が発生するために、鼻がつまった状態が続き、頭痛や顔面痛につながるのです。

しかも、虫歯が原因である場合は、原因を取り除くまで副鼻腔炎も完治することはありません。抗生物質で炎症を抑えながら、歯の治療を行う必要があります。

顎関節症

下顎は、顎関節という関節にぶら下がる形で頭の骨にくっついています。顎の位置は、上下の歯のかみ合わせバランスによって安定しています。虫歯になった位置がかみ合わせ部位だとしたら、少しずつ歯の表面が削られていくことにより、かみ合わせもずれていきます。また、片側だけの虫歯の痛みなどで、反対の歯で噛めばよいという状態(片側噛み)が続くと、顎がずれていくことは言うまでもありません。顎関節に負担がかかったり、不安定な状態が続くと顎関節症になります。顎が開かなくなったり、口を開けるたびに音が鳴ったり、痛みを伴ったりすることもあります。

脳梗塞、脳腫瘍、心筋梗塞

お口の中は、皮膚に覆われずに粘膜のすぐ下に毛細血管が張り巡らされています。虫歯菌が悪化した虫歯の奥から血管に入り込んでしまうと、全身に菌が駆け巡るのです。体の他の部分が怪我をしたら、消毒をして傷口が塞がるまで無菌状態でいられるようにします。ですが、虫歯の場合は自然に塞がることもなく、無菌状態を維持することはなかなか難しいものです。それをいいことに、虫歯の部位から細菌が体内に侵入し、毛細血管・血管を介して、いろいろな部位に飛んでいきます。虫歯からの細菌が脳で悪さを起こすと、脳梗塞、脳腫瘍、それが心臓であれば心筋梗塞などを引き起こしてしまう原因となるのです。特に、脳と心臓はとても大切な臓器であるため、心臓からそれぞれの臓器に血を運ぶための血管も太いのです。大きくて交通量の多いところは、細菌も侵入しやすいですよね。

また、細菌が脳や心臓に直接行かなくとも、血液内で血栓を作ることで、脳梗塞、心筋梗塞を引き起こす危険となります。

敗血症

敗血症とは、感染症をきっかけにさまざまな臓器の機能が弱ってダメになっていく病気です。体の一部に細菌がはびこることから起こります。その部分から血液内に毒が流れ続けることで、血液を介してつながっているそれぞれの臓器が少しずつ毒に侵されてしまうのです。はびこった細菌が生み出す毒が、血液を通って全身を回り、体の抵抗力が負けてしまうことでこの病気になります。肺や腎臓などの大事な臓器が、毒で侵され徐々にそれぞれの機能が果たせなくなっていきます。

虫歯が原因であれば、血液を通して毒を流し続ける根源は虫歯となります。虫歯を治療しない限り、体に毒を流し続けるということになるのです。

海外では虫歯を原因とした敗血症により、命を落とす例も実際に起こっています。

5.一刻も早い虫歯治療を

これらの症状や、悪化事例は誰でもが起こるものではありませんが、可能性は0ではありません。また、若くて健康であれば免疫力も高いため、自然治癒の力や抵抗力が勝り症状が現れることも少ないかもしれません。

しかし、虫歯が放置されている限り、悪影響をおよぼす諸悪の根源はそこにありつづけます。風邪をひいたりして抵抗力が低くなった時に、虫歯菌が猛威を振るってくるということもあります。また、幼児や高齢者は、活発な働き世代に比べて、抵抗力が弱いので、危険性が高まります。

虫歯を放置するとやがて痛みは消えてなくなります。そこからが、ほんとうに恐ろしいということを忘れないでください。痛みは体に異常を教えてくれるアラームであって、それを放置するとアラームは壊されてしまうのです。どんなアクション映画でも敵陣を攻撃するには、必ず初めに監視カメラから壊すのと同じです。

お口の中が健康であれば、ここに載せていないものも含めて様々な病気のリスクを下げることができます。虫歯は悪化すればするほど、処置も大変なものになります。治すために痛みも時間もお金も、犠牲になるものが増えていくのです。

正しい処置をすることで、きれいで丈夫な歯を悪い虫歯菌から守ってください。

プラザ若葉歯科は、やっつけるべき悪い虫歯菌からあなたを守る正義の味方です。
どんな時でも頼っていただければ、必殺技を繰り出し、かならずや守ってみせます。
不安なことがあれば、遠慮なくご相談にいらしてください!