歯ぐきの腫れは放っといても大丈夫?

「あれ、歯ぐきが腫れているかも?」と思ったことはないですか。朝起きて鏡を見るときに、気が付くことが多いかもしれません。お口の中はとてもデリケート。体のコンディションやお掃除の度合いによって刻一刻と変化しています。特にほんの少しの歯ぐきの腫れには、自覚症状がないことが殆どです。歯ぐきの腫れは自然に治るものなのでしょうか。今日は、歯ぐきの腫れの原因や、腫れたまま放置しておくとどうなるのかについてお話します。

1.歯ぐきの腫れの原因

(1)歯垢(プラーク)

歯ぐきが腫れる原因にはさまざまありますが、最も多く身近な原因は歯垢です。歯垢とは、朝起きたときや歯磨きをしなかったときに、歯の表面にできるネバネバしたものを指します。歯垢は、食べ残しや磨き残しではなく、お口の中にある生きた細菌が塊となって歯についたものなので、たとえ飲食していなくても発生します。この歯垢には、虫歯菌や歯周病菌がものすごい密度で詰まっているのです。その密度は歯垢1gあたり1000億個以上の細菌とも!!

この生きている細菌の塊は、「プラーク」や「バイオフィルム」と呼ばれることもあります。ネバネバしているので、歯に密着してくっつき、その中に潜む様々な菌からは酸や毒素を発生させています。

腫れの原因は歯と歯の間や、歯と歯ぐきの間についた歯垢の中にある菌が毒素を出して、歯ぐきや歯を攻撃しているからです。腫れというのは、そもそも悪い細菌と体の免疫力が戦っている証拠なので、歯ぐきの腫れは、歯垢からの攻撃に体が免疫力で立ち向かっているということでもあります。歯ぐきについた歯垢が原因となって腫れている場合は、原因元の歯垢がなくならない限り腫れは収まりません。消毒されない傷口が完治しないのと同じです。

歯垢はネバネバしているので、お水でゆすぐだけでは取れません。歯磨きが重要なのは、このためです。LET`S歯磨き!です。粘着性の高い歯垢がある程度なくなれば、歯ぐきの腫れは収まります。正しい歯磨きは100益あって1害もなし!!なのです。

(2)ストレスや疲労などによる免疫力の低下

疲れている時や心身に気が付かずに負荷がかかっている時は、風邪にかかりやすくなったり、お肌の調子が悪くなったりします。それと同じように、心や体の負荷はお口周りにも影響を与えることがあります。いつもと同じように丁寧に歯を磨いていても、歯ぐきが腫れてしまうことがあります。疲労やストレスが体の免疫力を低下させてしまうためで、唾液の自浄作用でカバーできなくなったり、もともと安定していた歯周病が不安定になることで、歯ぐきが腫れてしまう原因ともなるのです。

また、アルコールを摂取した場合も体の抵抗力・免疫力が低下しますので、歯ぐきが腫れる場合があります。タバコを吸っている場合は、体に酸素を送る血管が細くなってしまっているため、歯ぐきが腫れやすくなったり、腫れたときの治りが遅くなりますので注意が必要です。

(3)歯肉炎、歯周炎

歯垢や歯石の付着が慢性化すると、一時だけでなくずっと歯ぐきがぶよっとした状態になります。引き締まった歯ぐきでなく、赤くぶよぶよした状態が続いている方は要注意です。

腫れている部分の歯磨きが行き届いていないということです。特に、歯周ポケットと呼ばれる歯と歯ぐきの間の汚れが取り切れておらず、時間がたつごとにそこにさらなる歯垢がたまっていってしまうという悪循環に陥っています。悪化した歯肉炎・歯周炎は歯ブラシだけでは対処できないことが多いです。歯ぐきの腫れが治らない場合は、歯医者さんでのクリーニングと除菌をお勧めします。

(4)親知らず

親知らずの周囲が腫れている場合は、親知らず自身に原因があることが多いです。親知らずが生えてくる方向が斜めになっていたり、その手前の歯とぶつかっていたり、根っこを押し合っていたりする場合があります。

親知らずが原因で歯ぐきが腫れている場合は、親知らず自体の処置が必要なため放っておいても治ることはありません。日常生活に支障がなければ、急患として診せる必要はないのですが、痛みに発展する可能性が高いため、早めに歯医者さんへの受診されることをお勧めします。

(5)歯根が割れている

歯ぎしりや食いしばりのある方に多いのですが、歯ぐきの中で歯の根っこが割れたり、かけたりしてしまう場合があります。そのことを歯根破折というのですが、歯の根っこ、歯根が割れてしまった場合は、割れた部分に細菌感染が発生して腫れる場合があります。痛みを伴う場合も多く、放置する炎症の範囲が広がってしまうため、早急な手当てが必要です。

(6)薬の副作用

高血圧や免疫を抑制するお薬を服用されている方は、そのお薬の副作用により歯ぐきが腫れてしまう場合があります。歯磨きやお口の汚れが原因ではないので、歯磨きや除菌などを行っても腫れは収まりません。

2.歯ぐきの痛み

腫れの原因にも様々種類があるように、歯ぐきの痛みにも複数の原因があります。腫れは痛みの前兆である場合もあるため、歯ぐきや歯に違和感があったり、歯ぐきの腫れが一定期間続いていたりと心配がある場合は、歯医者さんへ相談に行くことをお勧めします。痛みは体を守る予防線です。それ以上悪くならないように、警告として痛みを通して、教えてくれるのです。気になる痛みや腫れ、違和感を放っておかないことが大切です。

3.腫れや痛みの対処法

(1)除菌をする

腫れの原因が歯垢やそこから発生する歯周病である場合、フロスなどを使って歯磨きを丁寧にした後に、お口の中を除菌することで、腫れが収まる場合があります。細菌が悪い意味で活性化することで、炎症が起ります。そのため、イソジンなどのうがい薬でお口の中を除菌すると、細菌の働きが抑制され腫れを抑えることができます。

(2)体調を整える

免疫力の低下が、歯ぐきの腫れを引き起こしている場合は、バランスの良い食事をとり、ゆっくり休んで体調を整えましょう。健康な体でいると、抵抗力も免疫力も高い状態を維持することができます。疲れやストレスをためずに、適度にリフレッシュした状態でいられると、お口の中の健康も同じように保つことができます。

4.自分でできる予防策

(1)丁寧なブラッシングと歯ぐきマッサージ

お口の清潔さを維持できるのは、正しい歯みがきの習慣しかありません。歯と歯ぐきの間の丁寧なブラッシング、歯と歯の間のフロスなどをしっかりとすることで、きれいなお口を維持することができます。歯ぐきはとってもデリケートです。歯を磨く力加減にもよく注意して、強くなりすぎないように気をつけましょう。優しい力で、細かくちょこちょこ動かしながらのブラッシングが理想的です。歯を磨く力の強い方は、柔らかい歯ブラシを選んでくださいね。

また、歯ぐきの中の固くなった毛細血管や神経を和らげるために、歯ぐきのマッサージも一定の効果があります。指でできる簡単な歯ぐきをマッサージをご紹介します。

  1. 歯ぐきの外側から歯の根元に当たる部分を抑え、上下に細かく動かす。(1本ずつの歯を磨くイメージで)
  2. 奥歯から前歯にかけての歯ぐきを指で押さえ、ゆっくり半周させる。
  3. 1本ずつの歯の根元を押しながらくるくる回す。

(2)ビタミン類の摂取

普段から体を鍛えておくと、突然襲われたときに反撃することができます。いざという時の備えは健康も同じです。体の抵抗力・免疫力を高めるためには、ビタミンの摂取が効果的。根菜類に多くビタミンが含まれるのですが、特ににんじんはビタミンAの宝庫と呼ばれています。ビタミンAは体内の粘膜の働きを強めるため、お口の中や歯ぐきも活性化させてくれます。また、レンコン、ジャガイモ、ブロッコリーにはビタミンCが多く含まれるため、抵抗力を強めてくれます。抵抗力が弱くなっていると感じるときは、これらの食材を意識して取るとよいでしょう。

(3)寝る前の水分

寝ている間に、お口の中が乾燥してしまうことで蔓延してしまう細菌。唾液は、細菌を抑制する働きがあるのですが、お口が乾燥してしまうとその力を発揮することができません。どうしても寝ている間はお口が乾燥してしまうので、水分を良く取ってお口を潤すとよいでしょう。お口の乾燥も防ぐことができ、体の水分補給も行えます。寝ている間、口を開けてしまう方などにはマスクをしてお休みになることをお勧めします。

(4)食生活にメリハリを

何を食べるかも大切ですが、お口の環境にとってもっと大切なのは、食事をとる間隔です。食べ物を食べた後はお口の中は酸性に傾き、口の中の細菌が活動しやすい状態になります。食後、ゆっくりとアルカリ性へと戻っていくのですが、だらだらとお口の中に食べ物を入れていると、いつまでたっても酸性の状態となり、唾液の自浄効果の力が活躍できません。食事の時間、おやつの時間、きちんと区切ってメリハリとした食生活を送りましょう。

歯ぐきの腫れについて、原因や予防法などを紹介しましたが、いかがでしたか。お口の中や歯ぐきはささいな体調の変化をよく反映します。疲れている時の口内炎や、体の水分が足りなくなったら唇が乾燥してくる、などは多くの方が経験しているのではないでしょうか。

また、些細な体調の変化が表れてしまうだけでなく、口元は元気な笑顔の象徴でもあります。引き締まった歯ぐきと白い歯は、自分の自信にもつながります。健康な食生活と豊かな日常生活にとって、とてもたいせつな歯と歯ぐき!丁寧なメンテナンスで、いつもぴかぴかでいられますように。

歯磨きや上手なフロスの仕方、歯周病菌の除菌など、ご相談があればいつでも、プラザ若葉歯科においでください。お待ちしております